男前・北野組、急逝の大杉漣さんしのぶ…
ビートたけしが審査委員長を務める「第27回東京スポーツ映画大賞」授賞式が25日に都内にあるグランドプリンスホテル高輪で行われ、『アウトレイジ 最終章』に花菱会の会長・野村役で出演していた故・大杉漣さんが助演男優賞を獲得、共演者ら北野組の面々が大杉さんをしのんだ。
全国11の映画祭ディレクターが選考した結果をもとに、ビートたけし審査委員長が独断で選ぶ本映画賞。27回目を迎えた今年の助演男優賞には『アウトレイジ 最終章』の出演者である大森南朋、ピエール瀧、松重豊、金田時男、そして大杉さんが選ばれた。
授賞式オープニングにステージに登壇したたけしは、「今日は大杉漣さんのこともありますし、あまりくだらないことばかりしている場合じゃないんですけども……」と切り出しつつも、「審査員冥利(みょうり)というか、わたしのわがままで自分の映画に賞をあげているわけじゃありません。(賞は)別にどうでもいいものなので。気に入った映画があれば、(その作品に賞を)あげたいと思うんですが、今年は不作だったような気がします。それで『アウトレイジ』が残っちゃったような気がします」と今年の審査結果を振り返った。
そして壇上に立った大森が「僕は『アウトレイジ』シリーズがずっと好きで。出演させていただくことを願いながら、しばらくやっていたんですが、ついに出られることになって。大杉さんと一緒にこの賞を取れたことを誇りにして生きていこうと思います」と語ると、松重も「大杉漣さんと一緒に僕も北野映画に出演できて。『こんな晴れやかな場所に一緒に立てるんですね』という喜びを、つい4日ほど前に千葉の海で話したばかりなので、残念ですけど……。でも湿っぽいのが嫌いな漣さんなので。これからも僕らを見守ってください」と続けた。
さらに主演男優賞を獲得した西田敏行からは「惜しむらくは、大杉漣という戦友を失いました。大杉さんには松竹映画の『釣りバカ日誌』にも出ていただいて。楽しんだ思い出があるので。とても辛いですけど、あんなに急逝というか、突然に逝ってしまうというのは、今思うと、大杉漣さんらしいなと思っています」というコメント。
そして「人間の死は寿命だと。そういう風に思うようにしないと納得できないので……。寿命なんだと思います。麻雀師で作家の阿佐田哲也さんが、夏目雅子さんを亡くした伊集院静さんに向けて、『人間の死は寿命なんだよ』という風におっしゃったという話を聞いて。そうだなと。まさしく感じています。人間は病気や事故で死ぬんじゃないんだ。寿命なんだよと。そう思うと楽になりましたと伊集院さんもおっしゃっていて。あまりにも早いんですけど、家族とかまわりの友人に迷惑をかけないようにして、一気に逝っちゃったんだろうと、今は自分の中で思っています」と北野作品を支えた名優の早すぎる死を惜しんでいた。
そして同じく主演男優賞を獲得した塩見三省は、2014年に脳出血で倒れてからカムバックを果たし、鬼気迫る演技が本賞につながった。「衣装合わせの時に、北野監督から『よろしくね』と言ってもらってから、こんなところまで引っ張っていただいて。これからの人生、今日のこの日のことは何回も思い出すと思います。この日を糧にして、俳優というものに、映画というものに近づいていきたいと思います。監督、そしてスタッフの皆さん、キャストの皆さん、ここに立たせてくれて、お礼を言います。ありがとうございます」とあいさつすると、「大杉、俺はこんな身体になったけど、もう少しやってみるよ。ありがとう」と天国の大杉さんに呼びかけた。
「第27回東スポ映画大賞」受賞結果
作品賞:『アウトレイジ 最終章』
監督賞: 北野武『アウトレイジ 最終章』
主演男優賞:西田敏行、塩見三省『アウトレイジ 最終章』
主演女優賞:長澤まさみ『散歩する侵略者』
助演男優賞:大杉漣、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、金田時男『アウトレイジ 最終章』
助演女優賞:広瀬すず、斉藤由貴『三度目の殺人』
新人賞:金田時男『アウトレイジ 最終章』
外国作品賞:『ラ・ラ・ランド』