ディートリッヒ・マテシッツさんは
「愚か者は愚か者と呼べ」を信条にビジネス界に君臨する実業家。
エナジードリンクブランド、
「レッドブル」を率いてソフトドリンク業界で革命を起こしました。
マテシッツ氏は
大のモータースポーツファンであり、F1のスポンサーなどでも有名です。
そんな彼がコレクションの為に建設した
博物館「Hanger-7(ハンガー7)」とマテシッツ氏の
「レッドブルの経営理念」を今回は紹介したいと思います!
オーストリア・ザルツブルクの中心街より車で約15分。
「ハンガー7」は、飛行機格納庫(=ハンガー)が並ぶエリアにあります。
「7」と名づけられたのは、すぐそばに6つの空港管轄格納庫があるため。
格納庫と名付けられているものの、巨大なシューズボックスのような無機質なものとは別格で、曲線を描く透明感あふれるドーム型の建築は芸術作品のような風格があります。
飛行機の片翼を表現したドームを成しているのは、1200トンの鉄鋼と、美しい曲線を表現するために作られたすべて形が異なる1754枚の特殊ガラス。
設計から完成まで4年を費やした長さ100m以上ある広大な空間には、
ダグラスDC-6B、B-25、アルファジェット、チャンス・ヴォートF4U-4など世界的に貴重な機体がずらり。
そのすべてが定期的にメンテナンスされ、いつでも飛行可能です。
ここにはレッドブルが運営する「フライングブル」のチーム30名の技術者と15名のパイロットが所属し、毎日のようにあらゆる飛行機が離着陸する様子を見ることができます。
これはマニアでなくても心が浮き立ちますね。
ちなみ
に入場料は無料でザルツブルグ空港に着いた人たちがよく立ち寄るスポットなんだとか。
ちなみに「ハンガー7」には4つのレストランがあり、どれも独自性に富んでいます。
月替わりで世界中からシェフを招聘し、独創的なメニューを楽しめるレストラン
「Ikarus(イカロス)」
飛行機を眺めながらのんびりとくつろげる
「Carpe Diem lounge Cafe(カルペ・ディエム・ラウンジ・カフェ)」
陽が暮れると照明がともり、天空に浮かび上がるバー
「Three sixty Bar(スリーシックスティ・バー)」
“スマートフード”を提案する
「Mayday Bar(メイデイ・バー)」
メイデイ・バーで出される料理はブレイン(脳)、ビューティ(美)、ムード(雰囲気)の3つのテーマからなり、前菜からデザートまで
すべてグラスでサーブされるのが特徴。
季節の食材を中心に蕎麦や豆腐などの和の食材を積極的に取り入れ、色合いや盛り付けはアートのように。グラスに盛り付けられているので、フォークやスプーンだけで手軽に食べられます。
次の予定を考えながらメニューテーマを選び、目で料理を楽しみ、ひと口食べて感動したり驚いたり、どんな食材かで話が弾み、自分の体に興味が湧く。
学びながら楽しむ食事こそ、五感に刺激を与えてくれるのかもしれません。
ディートリッヒ・マテシッツは、レッドブルという異色の会社を率いながら、
商売の原理原則に忠実な経営者です。
彼が会社を興す際、最初に作った資料には
「レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ」という言葉がありました。
ピーター・ドラッカーのいう
「顧客の創造」であり、企業の究極ともいえる目的です。
彼が成功したのは、奇策を打ったわけでも、発想が突飛だったからでもなく、ただ
「基本に忠実な経営」があったからです。
マテシッツの経営は
「独立自尊」を原理原則としており、
今後手に入るかもしれない金ではなく、実際に儲けた金だけを活用します。
そのこだわりは強く「銀行にだけは借金をするな」という社則を出すほどでした。
レッドブルの
販売開始から3年目にして黒字を達成し、それ以降赤字に陥ったことはなく、新市場の開拓もすべて手持ちの資金でまかなわれています。
独自の価値を創造し、グローバルに事業展開をしようとする意志のある日本の若い企業にとって、重要な示唆に富んでいるのではないでしょうか。