「レモン市場」は買い手にとっても売り手にとっても嫌われもん?
「レモン」=「欠陥品」
インターネットという言葉が目新しかったのも、20年前くらいでしょうか。
あっという間にネットオークション、ネットショッピングも当たり前になって、私も購買にあたり、さまざまな成功と失敗をしてきました。(笑)
そんなことを何気なく思いながら、WEBサイトを閲覧しているときにパッと目に入った「レモン市場」。先物取引か何かのマーケットかなと思ったら、アメリカのアケロフという経済学者の経済における情報の影響を分析した「レモンの原理」に基づくもののよう。なんとなく、ネットオークションやネットショッピングを通ずるものを感じ、興味が湧きました。ちなみに、レモンは英語で「無価値」「不完全」などの意味を有し、転じて「欠陥品」なども指すようになったようです。日本では、強い酸味とほのかな甘さが恋愛、とくに初恋と関連づけられ、ファーストキスはレモンの味などと言われることもあるのに。それぞれ持っているイメージは各国いろいろですね。
知っていると知らないという不平等
「レモン市場」の一番わかりやすい例としては、マカロフが論文でも取り上げた中古車市場です。ご存じの通り、中古車には多様な車種や価格のものが存在します。そして、同じ車種であっても良質なものとあまり程度がよろしくないもの(ここでは悪質なものとしましょう)が混在しています。良質なものが150万円、悪質なものが30万円の価値として、同じ数だけ市場にあるとします。
売り手は(例えば業者のように)品質がわかり、買い手は(一般ユーザーのように)品質がわからないという状況が自ずと生み出されます。このように、一方だけが情報を有し、もう一方には得ることができないことを「情報の非対称性」と言うそうです。
世の中は必ずしも自然淘汰されるわけではない
こうなると、買い手は、品質がわからない状態で中古車を購入しなければなりません。価格は、良質なものと悪質なものの価値の間になるでしょう。
仮にちょうど真ん中で90万円になると、150万円の良質なものを持っている売り手は損をするので売らなくなり、30万円の悪質なものを持つ売り手は得をするので、どんどんと売るようになり、悪質なものばかりが市場に出回ることになります。一般的には、良質なものが競争に勝って生き残ります(自然淘汰)が、このような情報の不完全さ(情報の非対称性)により、悪質なものしか市場に流通しなくなります。これを「逆淘汰」や「逆選択」と言うそうです。逆に言えば、情報さえ完全であれば、良質なものの市場と悪質なものの市場のそれぞれができるはずです。これは、情報の不完全さが、経済へ悪影響を及ぼしてしまうということにほかなりません。
売り手と買い手との情報の共有
その解決策は、売り手による情報の開示、市場の透明性だと言えます。日本の中古車市場においては、買取専門店と中古車情報誌の登場によって、品質の向上や情報の供給量など大きな変化を遂げました。また、インターネットの普及により、比較的さまざまな情報が入手しやすい環境になったのも、中古車市場だけでなく、多くの「レモン市場」において変化が起きていると言えるのではないのでしょうか。また、情報の非対称性はパソコンや家電製品においても存在していますが、品質保証契約によって買い手が安心して購入できています。このように品質保証契約も、情報の非対称性を打ち消す策と言えるでしょう。
甘くて美味しい蜜の味・・・はない?
ところで、「レモン市場」には対義語があり、「レモン」の皮が固く中が見えないのと比較したのか、皮が薄く品質の善し悪しがわかりやすい「ピーチ」を引き合いに出し、「ピーチ市場」というそうです。もちろん、意味は「レモン市場」とは逆で、良質なものが多く出回る市場。しかし、皆が安心だというので価格が急騰する可能性を持ち、品薄になりバブル化する危険性が孕んでいるということも言われています。すべてがいいことずくめ、というワケにはいかないようですね。
さいごに
いろいろとむずかしい話もしてきましたが、レモンの花言葉は、愛に忠実または情熱。「レモン(欠陥品)」と言われないよう、熱い情熱とまっすぐな忠義をもって、仕事に取り組みたい。そして、初恋のような、心ときめく仕事をしたいものです。あと、ネットショッピングでもレビューなどをよく読んで失敗などしませんように(笑)